要介護度の認定引き下げが、介護保険利用者におよぼす影響 からの続きです。
● 要介護認定の流れ・申請時の注意点~平成21年4月の基準見直しの影響 でもご説明したとおり、介護保険においては「要介護度別の支給限度基準額」として、サービス利用合計の1ヶ月あたりの上限額が定められていますが、注意点がもうひとつあります。
それは、「上限額をたとえ一円でもオーバーしてサービスを利用してしまうと、そのはみ出した分は全額、利用者の自己負担となってしまう」ことです。
● 「はみ出した金額の1割を負担」ではなくて、限度額を上回った金額分は、まるまる10割分を負担しなくてはなりません。
たとえば限度額が20万円であったとして、サービスを22万円分利用してしまった場合は、「限度額20万円×1割の2万円の自己負担額にさらにプラスして、20万円からはみだした2万円もあわせて負担しなくてはならない」ということです。
● したがって、この限度額の範囲内で収めて、その中でどのようなサービスをどう組み合わせて利用するのがよいか...については、入念な計画をたてる必要があります。
この「いつ・どのようなサービスを・どの事業者から・どれくらい利用するのか」という計画が、 介護保険のはじめの一歩 「要介護認定」と「ケアプラン策定」 でご説明した「ケアプラン(介護(予防)サービス計画)」です。
● ケアプラン作成はケアマネジャーと相談しながら進めていきますが、この上限額をはみださないよう管理しつつ、利用者が必要とするサービスを最大限活用できるように計画をまとめあげていく必要があります。
ケアプランは自己作成することもできるのですが、外部の専門家の手を借りずに自分でやる場合は、ここが難所となります。
言い換えればここがまさに、ケアマネージャーの腕の見せ所ともなるわけですね。
●なお、この「要介護度別の支給限度基準額」は 介護サービス・介護予防サービス 種類とその概要 でご説明した「居宅(在宅)サービス」において適用されるもので、特別養護老人ホーム(特養)など介護施設に入所してサービスを受ける「施設サービス」では適用外となりますので注意しましょう。
さらに「介護予防サービス」の一部においては、利用限度いっぱいまでサービスを利用していなくとも、利用回数の制限を受ける場合があります。
また「福祉用具購入費」や「住宅改修費」においては、要介護度にかかわらず上限額が一律で定められている(福祉用具購入費は年10万円、住宅改修費は年20万円が上限額)ことから、こちらにおいても支給限度基準額の考え方は適用されません。
(なお「福祉用具購入費」や「住宅改修費」については、それぞれ関連サイト内記事 介護用品・機器 「福祉用具購入費」の支給について。 および 介護保険に係る、「住宅改修費」の支給について。 をご参照ください。)
ケアプランの作成段階でこのような例外がいくつか入り込んでくるケースもありますので、わからない点はケアマネジャーにきちんと質問し、ひとつづつ確認しながら作っていくようにしましょう。
●さて、このようにして「ケアプランの原案」ができあがったところで、本人と家族・ケアマネジャー・利用しようと考えているサービスの提供事業者・行政担当者らが一同に会して、さらに細かな内容を話し合い、修正が必要な点があれば修正していきます。
そして、利用者側として最終的に納得のいくケアプランができたなら、いよいよ介護サービスの提供事業者と契約を行うことになります。
担当ケアマネジャーに、サービス提供事業所への手配をしてもらいます。
●契約は、「利用すべきサービスごと」に契約書を作成します。
契約する段階で、契約書といっしょに「重要事項説明書」が渡され、事業者は契約の特に重要な点について、口頭で説明を行うことを義務づけられています。
重要事項の説明を受けるのに特に費用はかかりませんので、納得いくまでよく説明をきき、わからない点があれば遠慮なく質問しましょう。
●契約書の枚数も多くなりがちですが、だからといって確認をおろそかにしてハンコを押してしまってはその内容に同意したことになり、あとで文句をいったところで後の祭り...ということになりかねません。
契約書は、サービスや項目によって、キャンセル料や契約の解除など事業者側に有利な条件で設定されている場合もあります。
この重要事項の説明はよく聞いたうえで、疑問点があれば納得のいくまで遠慮なく質問するようにしましょう。
納得したら、この重要事項説明書と契約書に双方が署名・捺印し、いよいよ契約成立となります。
●ちなみに重要事項説明書・契約書はきちんと一ヵ所にファイルしておいて、あとでケアマネージャーや事業者とのやりとりがしやすいようにしておきたいものです。
ケアプランやケアマネジャーを変更する場合の、手続と注意点 も、あわせてお読み下さい。