介護保険の在宅サービスは利用限度額(支給限度基準額)が決まっているため、「限度枠いっぱいを利用してもまだ全然足りない」という方もいれば、万一の急なショートステイ利用などに備えて、限度枠を意図的に余すようにしている方もいます。
介護サービスの利用料金としては、公的な介護保険が一番安くあがることは確かですが、それだけでは足りないというケースや、あるいは費用がかかっても追加的・代替的に、介護にかかわるさまざまなサービスの利用を行いたいケースもあるでしょう。
介護保険の介護サービス以外に利用できるサービスを、いくつかご紹介します。
(保険外サービスについては、混合介護とは~介護保険外サービスの広がりに備える も、あわせてご覧ください。)
● 市区町村が独自に行うサービス
介護保険事業以外に、各市区町村が独自に実施している高齢者の福祉・生活支援のためのサービスがあります。
どのような内容のサービスか、また利用対象や利用条件などは、市区町村によってさまざまに異なります。無料によるサービス支給もあれば、利用者の一部自己負担が生じる場合もあります。
また慰労金などのかたちで金銭支給を行う場合もあれば、紙おむつや配食など現物を支給するかたちのサービスもあります。
該当する市区町村のホームページでチェックしたり、詳しい内容を介護福祉課などの担当窓口へ照会してみるのが早道です。
以下、全国の市区町村における独自サービスのいくつかをご紹介します。
・家族介護慰労金の支給(大阪府高石市)
・緊急生活支援宿泊サービス[緊急ショートステイ] (東京都中央区)
・訪問理容サービス(愛知県幸田町)
● NPO(非営利団体)によるボランティアや提供サービス
地元のNPO(非営利団体)が、介護に関わるさまざまなサービスを提供していることがあります。
登録制による住民参加型の団体としてさまざまなサービス提供を行うものですが、介護保険の提供サービスよりは高いものの、民間事業者に頼むよりはずっと安く済むような利用価格設定が多いようです。
介護が必要な利用者のためだけでなく、日頃から介護に追われる家族(介護者)のための、家事代行や洗濯なども対象とする場合もあります。
これも地域のNPOによって、ボランティアのスタイルや、サービスの提供形態はまちまちですので、地元の社会福祉協議会や地域包括支援センター、市区町村の介護担当窓口などに問い合わせてみるとよいでしょう。
NPOが提供するサービスを利用する場合は、登録スタッフがきわめて低廉ないし無償のボランティアで行っていることが多いので、プロの介護事業者を利用する「お客」としての姿勢をもって接するのはよくありません。
またサービスの水準にしても、プロの提供するそれに比べると、物足りなさを感じることもあるかもしれません。
これらの組織は基本的に相互扶助の精神で運営されていることを踏まえて、節度ある利用を心がけるようにしたいものです。
以下に関連情報の入手先を、いくつかご紹介します。
・日本ケアシステム協会〔全国まごころケアネット〕
● 民間事業者の提供サービス
訪問サービスや家事代行サービス・配食サービスなどを提供している民間事業者は、要介護度を問わず、また必ずしも介護にかかわらないケースであっても、利用料金を払うことによってサービスを提供してもらえます。
ただし、介護保険利用によるサービスに比べると料金の水準がぐっと高くなるのはやむを得ないところであり、計画性をもった利用が必要になります。
また事業者によってサービス内容・提供の水準もまちまちですから、事業者の評判について事前にチェックするくらいの慎重さは必要です。
業者の評判などについて地域包括支援センターに相談したり、あるいはインターネット・近所の利用者の口コミなども活用するようにしたいものです。
● 民間の介護保険・介護ローン
介護費用の工面を考える時間的な余裕がある方は、介護が必要な状況になった段階で、年金や一時金のかたちで受け取ることのできる「民間の介護保険」の利用を考えるのもよいかもしれません。
民間の介護保険・介護ローンで、介護費用をカバーする際の注意点。
勤務先を退職し、まとまった退職金が手に入った段階で、保険料を一括で支払う方もいるようです。
介護費用の工面については、貯蓄・民間介護保険・介護ローンなどさまざまな方法がありますので、先々の家族や自らの介護について考える時間的余裕のある方は、ひととおり調べておくことをおすすめします。