要介護認定の判定基準見直し(平成21年4月実施)、その概要と問題点 および 介護サービスの単価と「単位」の関係~介護報酬の改定が及ぼす影響 で記したとおり、平成21年(2009年)4月から、「要介護認定の判定のしくみの一部変更」と同時に、「介護報酬の3%アップ(プラス改定)」が行われました。
調査員が行う認定調査の項目数を82項目から74項目まで減少させたことにより、「要介護度が、実際よりも軽く認定されるおそれが高まるのではないか」との指摘がなされていました。
要介護認定の新基準が導入された直後に、厚生労働省が実施した全国調査の結果、その懸念が現実のものとなっていることが裏付けられました。
平成21年(2009年)4月以降の新基準にもとづき、要介護認定を新たに申請した人のなかで、「非該当(自立)」と判定された人の割合が前年同期から倍増する結果となったのです。
また要介護認定の更新申請者についても、一次判定の結果ベースで前年同期と比べると、およそ3割の人が前回よりも軽度に判定されていたことが明らかになりました。
ただし現在の利用者においては、希望によりこれまでの要介護度を継続できる「経過措置」が適用されるため、現時点では大きな影響はでていないようです。
現在の介護保険利用者にとっては、この「経過措置」がいつまで有効なのか、また「経過措置」が終了した後の扱いがどうなるのかについての不安が否めないところです。
この要介護認定の新基準は、地域や経験によって異なる調査員の判断の偏りを正し、認定基準の標準化をはかること、そして認定基準のあいまいさによって生じる現場の調査員の負担を軽減すること、を目指して導入されました。
地域や担当調査員の判断によって要介護度が異なった認定をされるようでは、それはそれで問題ですし、新基準における調査方法がやがて定着してくれば、調査の精度も上がってくるかもしれません。
いずれにせよ、今後の展開を待つ必要がある問題ですので、介護保険の利用者・そして今後の利用を考える方にとっては、要介護認定が適切になされていないと判断した場合は、現時点で利用できる制度にもとづき異議を申し立てるべきでしょう( 要介護認定の結果に疑問・不服がある場合の対処方法とは ご参照)。
また、もうひとつの介護報酬の3%アップ(プラス改定)については、支払われる側である事業者の使途になんら制限がないため、アップ分すべてが事業者のスタッフの人件費に充てられるとは限らないという問題点が、当初より指摘されていました。
特に今回は、介護福祉士や3年以上の勤続年数者などを一定の割合で雇用する事業所に対して、介護報酬の加算項目が認められているため、大きな事業所が有利となり、小規模の事業所が経営悪化によって淘汰される方向に進むのではないか...と懸念されています。
また今回の介護報酬改定は上で述べた「加算」に強弱をつけるやり方のため、人材確保の面から有資格者を募集しやすい、都市部の事業所が有利となることも否めません。
介護保険の利用者としてはこの点についても、今後の影響を見定めるようにしていくほかありません。
現在すでに利用している事業所・あるいは居住地域の事業所の経営に影響を及ぼしてくるようだと、事業所の突然の閉鎖・倒産、あるいはスタッフの離職による担当の交代・提供サービスの悪化なども、十分にあり得る話です。
地元紙やテレビの関連ニュース・あるいは近隣の利用者の口コミ、ケアマネジャーや地域包括支援センターの情報などには、ふだんから注意しておく必要がありそうです。