●平成21年(2009年)4月から要介護認定の判定基準が一部変更され、「認定調査」に関する見直しが行われました(「認定調査」については、介護保険の申請~「主治医の意見書」「認定調査」で気をつけたい点 をご参照)。
●大きな変更点は、これまで「82項目」あった認定調査の調査項目数を再編して絞り込み、平成21年(2009年)4月から「74項目」としたことです。
「これまでは調査項目数が多く、認定調査を行う調査員や二次判定を行う介護認定調査会の負担が大きかったことから、その軽減をはかった」との理由が、その背景にあるようです。
また認定する側の思惑としては、個別具体的なことは「特記事項」の欄に書いてもらったり、あるいは「主治医意見書」に書いてもらえば代替できる、との判断もあるようです。
ちなみに今回の変更で減らされた調査項目には、「暴言・暴行」「火の不始末」「異食行動」「幻視・幻聴」など、認知症の症状に関わるものが目立ちます。
これらの項目が調査票から無くなっても、主治医意見書に書いてもらえばわかる...と考えたのかもしれません。
●しかし、新しいこのやり方については、
「主治医といえども、その人の日常の状態をどの程度把握しているかわからないし、それをちゃんと意見書に反映できるのか」
「主治医がいなかった場合で行政の紹介による医師の場合、的確に把握することなど無理ではないか」
「そもそも調査項目から無くなるこれらの点について、調査員がちゃんと気づいて特記事項に書くことができるのか。もし見落とした場合は、介護認定審査会においても、見過ごされてしまうのではないか」
といった利用者・家族側からの不安の声が、ただちにわき起こることとなりました。
もちろん行き着く先として、「利用希望者の日頃の心身状況をきちんと反映しないまま要介護認定の審査が行われ、軽度の認定を受ける可能性がさらに高まるのではないか」という点を恐れているからです。
●「要介護」の認定を受けてもおかしくない方が「要支援」と認定されたような場合は、介護保険のサービス提供の範囲や利用限度額(支給限度基準額)がずいぶん違ってくるため、とりわけ要介護認定の更新を受ける利用者にとって、その影響は深刻なものとなるはずです。
●また、調査員による認定のムラを防ぐという名目で、高齢者の介助が行われていない場合については、まず調査票項目の「介助されていない」を選び、そのうえで介護が不足しているときに特記事項にその理由を記載するやり方へと、調査員の認定基準も一部改められました。
これは結果的に一次判定を重んじる方向にはたらくため、やはり要介護認定で軽度とされる可能性が高まる方向につながります。
介助が行われない理由は様々なはずなのに、特記事項にもし何も追記がない場合には、調査票に外形的に書かれた「介助されていない」という部分が優先されてしまうからです。
●認定調査のために訪問する調査員が、どの程度の経験や判断技量の持ち主かといった個々人の能力や適性に依存する問題も、指摘されているところです。
利用者の事情をよく汲んで、かりに調査項目に無くとも特記事項欄にきちんと適切かつ簡潔に記載できる調査員が、全国の事業所などにまんべんなく配置されているわけではないからです。
調査員にとっても、特記事項の重要性がこれまで以上に増すことになり、果たして当初に意図したとおり、彼らの負担軽減になるかどうかすらはっきりしないところです。
●上記のような批判の声が、平成21年(2009年)4月のスタート早々から強まったこともあり、その後厚生労働省は、「認定更新の場合、新基準での要介護認定の結果がおりても、本人が希望しさえすればこれまでの要介護度のままのサービスを継続して受けられる」という内容の、「経過措置」を発表しました。
更新時の申請書類にある本人希望を記入する欄に書いて、その意思表示を行います。
仮に更新時において現状よりも重度判定されたとしても、元に戻すことができるようになっています。
報道によれば、平成21年(2009年)7月末、厚生労働省はこの経過措置を平成21年(2009年)9月末をもって終了する方針を打ち出しました。(くわしくは 平成21年(2009年)の介護保険改正、利用者が注意したい今後の動向 もあわせてご参照ください)。
利用者としては、今回の懸念・批判がなぜ起きたかをよく検証してもらい、介護の現実を踏まえた見直しが本当に行われるかどうかを、引き続き注視しておく必要がありそうです。