前回(2014年)の改正から3年が過ぎ、2017年5月に「改正介護保険法」が成立しました。
正しくは、成立した改正法の名称は「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(以下、地域包括ケアシステム強化法)」です。
介護保険法のみならず、医療法・健康保険法・老人福祉法などの31に渡る法律・附則を含んだ「一括法」として改正されたものです。
急スピードで高齢化が進む日本において、年金・医療・介護を中心とした社会保障は、とりわけ財政面の舵取りがますます難しくなってきています。
「介護保険制度の持続可能性」を確保しつつ、2011年の改正で登場した「地域包括ケアシステム」をさらに推し進めていくことが、今回成立した「地域包括ケアシステム強化法」の主な目的となっています。
ちなみに2014年改正から、この「一括法による改正」が採られています。
個々の法律の緊密な連携がますます要請される環境下、このような言わば「大きな傘の下に個別の法律を入れ込む」方式が、より現状に即しているためでしょう。
前回(2014年)の改正に伴う変更の中には、たとえば「(国の)要支援者向けサービスの、市町村の地域支援事業への移行」のように、数年間の「経過措置期間」が置かれたものがあります(平成27年(2015年)の介護保険改正(3)~一部サービスの市町村移管 ご参照)。
現在進行中の前回改正を抱えつつ、今回さらに新しい改正が加わってくる形で、利用者側としてはフォローしづらい構図になっています。
それだけ介護保険をとりまく環境の変化が激しく、国としてスピーディな対応を迫られている、と見ることもできるでしょう。
改正法は成立していますが、今回の改正内容の大半は、平成30年(2018年)に入ってからの施行となります。
施行月は平成30年(2018年)4月であったり8月であったりと、個々の改正内容ごと異なることに注意が必要です。
それでは今回の改正につき、介護保険の利用者に直接の影響が大きいと思われる点を中心に、ポイントをご説明します。
(1)特に所得の高い第1号被保険者(65歳以上)の自己負担を、2割負担→3割負担に[平成30年(2018年)8月施行]
「一定以上の所得者」の自己負担割合が「1割」から「2割」に引き上げられたのは、前回の「2014年改正」でした。
平成27年(2015年)の介護保険改正(2)~利用者負担と補足給付の見直し
それからわずか3年で、現在2割を負担している人で「より所得の高い人」に該当する人の自己負担割合が、平成30年(2018年)8月から3割負担へと引き上げられます。
現在自己負担が2割の人の全員が3割負担になるわけではないので、その点はご注意下さい。「より所得の高い人」の基準に該当する人のみが対象となります。
「より所得の高い人」の基準は施行まで政令で定められますが、現状案では以下のとおりです;
「単身世帯」:年金収入等(年金収入+その他の合計所得金額[給与収入等-経費等])が340万円以上。「年金収入のみ」の場合は、344万円以上。
「夫婦世帯」:年金収入等が、463万円以上。
(注)ただし「年金以外の合計所得金額」が220万円に満たない場合は「2割負担」のまま。
すでに2割負担の段階で、月の「自己負担限度額」の上限に達している人もいる(特養の入所者等)ことから、負担が実際に増える利用者は、厚労省の試算によると全体の約3%(12万人程度)に過ぎない、とのことです。
ただし、負担増となる利用者の9割方は「在宅系サービス」の利用者と見られています。
自分が「どの負担割合に属するか」は、平成30年度(2018年)になってからお手もとに送られてくる「負担割合証」で確認することになります。
医療保険でも70歳以上の「現役並み所得者」の負担割合が3割であること等を踏まえれば、介護保険でも65歳以上の高所得者の負担割合が高くなることには、ある程度の整合性はあるでしょう。
それでも、高所得者の負担増のペースがやや速いことに、将来の負担増への懸念が示されているようです。
平成29年(2017年)の介護保険改正(2)~ 「総報酬割」導入・「介護医療院」新設 に続きます。