平成27年(2015年)の介護保険改正(1)~特養への新規入所者を限定 に引き続き、改正点のポイントを解説します。 
  (2)「一定以上の所得者」の自己負担額を、現在の1割→2割へと引き上げ[平成27年(2015年)8月実施] 
 介護保険制度のスタート以来ずっと、収入(所得)の額に関わらず、利用者の負担割合は「1割」に据え置かれてきました。 
 介護保険料~被保険者の種類で異なる納付方法・市町村で違う納付額 
しかし今回の改正で、「一定の所得基準を満たす者には、それ相応の負担をしてもらおう」という意図のもと、「一定以上の所得者」の自己負担割合が「2割」に引き上げられました。
なお、この負担割合の引き上げの施行は「平成27年(2015年)8月」なので、注意して下さい。 
6月に送られてくる住民税の課税通知には前年の課税所得が記載されていますが、このデータを受けて、利用者の負担割合が記載された「介護保険負担割合証」が、1割負担の方も含めた要介護者全員に発行されます(有効期間:8/1~翌年7/31)。
言い換えると、市町村の発行する「介護保険負担割合証」を見れば、自分の1年間の負担割合を確認できます。
 「一定以上の所得者」とは、「年間の合計所得金額(「収入総額」とイコールではないことに注意)」が160万円以上」の者です。これは年金収入のみの単身者の場合、280万円以上(年金収入280万円-公的年金の基礎控除額120万円=160万円)となります。 
 この金額を設定するために行われたモデル試算では、該当する利用者数は被保険者の上位2割程度、全国で約40~50万人に留まるとされています。
さらに「高額介護サービス費」による月額負担の上限などがあることから、たとえ対象者であっても全員の負担が2割になるわけではない、との説明がなされています(また、この金額的な線引きは「世帯単位」ではなく「個人単位」のため、夫婦が共に年金生活者の場合、例えば夫は2割で妻が1割となるなど、同一の世帯でも負担割合が異なるケースも出てくる点に注意が必要です。逆に夫婦それぞれの年金が160万円だった場合、個人単位の年金収入が各280万円未満ですから、二人とも1割負担のままとなります。)。 
 上で述べた「高額介護サービス費」は、月々の利用者負担額に上限額を設け、それを超えた分を介護保険の給付から払い戻してカバーする仕組みですが、この高額介護サービス費の上限額も一部変更されました。 
 同じく平成27年(2015年)8月からですが、「現役並み課税所得(145万円以上)の第1号被保険者がいる世帯」の負担上限額は、これまでの月額37,200円が月額44,400円に引き上げられました。 
 介護保険の各種サービスの内、「施設系サービス」「居住系サービス」については、負担割合が2割になると、9割以上がこの高額介護サービス費に達すると見られています。 
 したがって自己負担割合のアップは確かにフトコロに痛い話ですが、これにより高額介護サービス費の払戻対象に新たに該当する可能性もあるため、総合的に見て必ずしも負担額が一方的に増えていく話でもありません。
年金収入だけの方はまず対象とはなりませんし、ケース・バイ・ケースということですね。 
 介護保険を利用する側としては、まず今回の改正によって自己負担額がアップする対象となるか否かを、あらかじめケアマネジャー等に相談しチェックしておくと良いでしょう。 
そして負担増が見込まれる場合は、現在のケアプランを見直して利用サービスを変更したり、あるいは利用回数を減らすなどして、可能な範囲での防衛策を講じるべきでしょう。
介護保険のはじめの一歩 「要介護認定」と「ケアプラン策定」
 
 (3)低所得者への食費・居住費を補助する「補足給付」の、判定要件見直し[平成27年(2015年)8月実施]
 介護保険施設への入所において、食費や居住費(いわゆるホテルコスト)はもともと利用者の実費として、介護保険の給付対象外となっています。 
 しかし低所得者(住民税非課税世帯)対策のひとつとして、国が設定した基準額と利用者負担額との差額を介護保険から給付して負担を減らす「補足給付(特定入所者介護サービス費)」が行われています。 
 これまでは住民税非課税世帯の認定は、課税所得のみを勘案して行ってきましたが、今回の改正により預貯金等の「資産」も判定材料に加えることになりました。これは「平成27年(2015年)8月」から実施されています。 
 具体的に「補足給付の対象外」となるのは、 
  ・預貯金が単身世帯で1,000万円超、夫婦世帯で2,000万円超の場合
 ・本人所得が非課税でも、配偶者が住民税を課税されている場合 
 です。
預貯金の額は、通帳コピー等を添付した本人の申告に基づいて判断されますが、不正防止のための金融機関への照会や、不正受給者への加算金等の規定が併せて設けられます。 
 また遺族年金・障害年金など非課税年金を受給している場合も収入とみなし、判定に際して勘案することになりました。 
 介護保険財政が厳しくなるなか、補足給付の支給要件を厳格化することで、負担能力のある人には支払ってもらおうという狙いがあるようです。 
預貯金などの資産を把握されるのを嫌がって申請を出さない場合、補足給付の分は全額自己負担になってしまう点にも注意が必要です。
平成27年(2015年)の介護保険改正(3)~一部サービスの市町村移管 に続きます。