ホームヘルパー 介護サービス提供時における頼み方・接し方のコツ でも記したとおり、ヘルパーは家事を代行するお手伝いさんではありません。
ヘルパーと良好な関係を保つためにも、介護サービスとして彼らにいったい何をどこまで頼めるのかを、本人・家族が理解しておくことは大切です。
ヘルパーが行なってくれるサービス内容は、訪問介護事業者との契約時に、サービス提供責任者との間で作る「ホームヘルプサービス提供確認書(サービス計画書)」に基づいています。
「このサービス提供ができる」「これはできない」といった一律のメニューがあるわけではなく、利用者本人にとってどのようなサービスが最適なのか、利用者と家族・事業者ら関係する人々がケアプランの打合せ(サービス担当者会議)などの場で話し合って、個別に決めていくことになります。
ケアプラン作成~契約に至るまで、介護保険利用者が注意すべき点
いわばオーダーメイドで内容が決められるのですが、そうは言っても介護保険を利用する以上は、その理念と方針にそった基本的な原則(ルール)にもとづいたサービスでなくてはなりません。
まず第一に、提供されるサービスは、介護保険の利用者が「自立した日常生活を営むために不可欠」であることが原則です。
また、あくまで「介護保険を利用する本人」のためにサービスは提供され、本人の介護に必要なサービスだけが提供されることになります。
高齢者夫婦の一人だけが介護保険利用者の場合、同居しているからといってもう片方の未加入者に対してサービスを提供することは許されません。
飼っている犬の散歩などは、日常的ではあっても自立した生活のため不可欠とまではみなされないため、サービスの提供対象とはなりません。
さらに、介護保険の在宅サービスは利用者の「家庭内」の日常生活に対する支援が基本になるため、たとえば「利用者本人が旅行した時の、旅行先でのサービス利用」は、介護保険で行なうことはできません(保険外での自費対応となります)。
一般に家の外での支援サービス提供は、家庭内に比べると細い条件がつけられることが多くなります。
買い物は、一緒に行ってもらう「同行」も代わりに行ってもらう「代行」も、介護保険の利用が可能です。ただし「生活上必要な範囲の支援」という制度の趣旨から、生活圏内にあるお店での、生活必需品(食品・日用品等)購入に限られます。
遠方のお店にお中元など贈答品の代理購入を頼んだり、家族が使う物を「ついで買い」してもらったり等はできません。ヘルパーの交通費は利用者の負担になりますし、「ヘルパーの自家用車にちょっと乗せてもらって、タバコを買いに」といったこともできません。
ケアマネジャーに相談してケアプランに組み入れてもらうことになりますが、自立度の高い人は利用限度があったりで、サービスがやや使いにくいのも事実です。
可能ならばたまには気分転換を兼ね、外出して買い物を楽しんでもらうことも大切でしょう。そういったときは保険外(自費)にはなりますが、民間企業やNPOが独自に行っている買い物支援サービスを検討してみましょう。
お近くの訪問介護事業所や地域包括支援センターに相談すると、いくつか紹介してもらえるはずです。
もう一つ知っておくべきことは、介護保険上、同居家族がいる場合は「買い物」や「掃除」は彼らがやるべきとして、ヘルパーには頼めないのが「原則」ということです。
同居家族が日中仕事で不在であっても、帰宅後に家族がまとめて家事をできるような場合は、基本的にヘルパーのサービスを利用することはできません。
しかし同居家族に障害や重い疾病があるなど、個別の事情を汲んで例外的に必要性が認められるケースもあるので、サービス担当者会議であらかじめきちんと実情を話して、家族としての要望を明確にしておくことが大切です。
ちなみに同居家族が「ヘルパーとして」家族の利用者にサービスを提供することは、一部に例外はあるものの、サービスの公平性の観点から原則として認められないことにも注意しましょう。
また仮に要介護者本人のためであっても、ヘルパーが法的に行うことができない行為もあります。
たとえば本人の健康の維持に必要な服薬の介助や、軽度な傷の応急処置は許されていますが、本人の褥瘡(じょくそう、あるいは床ずれ)について、ヘルパーが薬を塗るなどの治療は医療行為にあたるため、医師法上行なうことができません。
糖尿病治療のインスリン注射や、尿路カテーテルの装着も医療行為に該当し、同じくヘルパーが行なうことはできません。
たんの吸引は医療行為に該当しますが、こちらは一定の要件を満たした事業所のヘルパーのみ、本人・家族の同意を得て担当医や看護師との連携のもとで、行なうことができるようになりました。)
(介護施設における介護職員の医療行為の実情、知っておきたい問題の背景。 ご参照)
これら以外においても、訪問介護で医療的ケアを介護ヘルパーに頼めるか否かについては、個々に細かく内容が定められていることに注意が必要です。
このように、ヘルパーは基本的にはサービス計画書に書かれたことしか行いませんし、また出来ないわけですが、そうはいっても例外的・突発的に発生することもあります。
それらを反映する必要がある場合は、ヘルパーがケアマネジャーや訪問介護事業所のサービス提供責任者と随時相談しながら、サービス計画を修正・変更していくことになります。