介護にかかる費用はできるだけ節約したいものですが、税金面においては、家族が使った一定の医療費と介護サービスについて、税額控除(医療費控除)を受けることができます。
自分自身や配偶者のために一世帯で年間10万円を超える医療費を使った場合、確定申告のときに課税所得から一定金額を差し引くことができます(医療費控除)。
そしてそのぶんに関わる税金を後で還付してもらうことにより、結果的に税金を安くすることができるわけです。
12月末までに医療費控除の条件を満たす医療費をまとめておき、翌年2~3月の所得税確定申告の受付時期に、期限まで申告を行うことになります。
なお確定申告の際には、サービスを受けた施設や事業者の発行した、金額が明記された「領収証」を添付する必要があります。
したがって、日頃から領収書をこまめに保管・整理しておくことが大切になります。
なお治療上必要な「紙おむつ代」も医療費控除の対象となりますが、こちらは「領収証」に加えて「医師が発行する証明書」も必要になります。
医療費控除で注意しておきたいのは、以下の点です:
・控除の対象となる医療費が決められていること
・(課税所得から)控除できる金額が「最高200万円」であること
まず「対象となる医療費」の範囲ですが、通常の病院における「治療費」や「薬代」のほかに、介護保険サービス(施設サービス・居宅サービス)および介護予防サービスの1割自己負担額・居住費・食費となります。
ただし、一部施設サービス費の居住費・食費については、「1割自己負担額の二分の一」が対象となります。
また一部の居宅サービス・介護予防サービスにおける居住費・食費、および「特別な居住費」「特別な食費」は対象外となります。
通常の医療費においては、以下が医療費控除の対象となります。
医療費控除の対象となる医療費(国税庁)
医療費控除の金額の計算方法は、以下のとおりです:
・1年間の所得金額の合計が「200万円以上」の場合
[(年間医療費の合計)-(健康保険などで補てんされる金額)]-10万円
・1年間の所得金額の合計が「200万円未満」の場合
[(年間医療費の合計)-(健康保険などで補てんされる金額)]-年間所得金額×5%
つまり普通のケースでは、年間10万円以上の医療費関連の領収書が無ければ、医療費控除の恩恵を受けられないということになります。
また所得税をほとんど支払っていない方の場合、金額を差し引くべき対象がそもそもないわけですから還付すべき税額も無い、ということになり、やはり医療費控除の恩恵を受けることはできません。
医療費や介護サービス費が高額になり、自己負担額が一定の上限金額を超えた場合は、医療費においては「高額療養費」が、また介護サービス費においては「高額介護サービス費」が、それぞれ別々にその超えた金額を申請にもとづき支給してくれます。
高額療養費・高額介護合算療養費(全国健康保険協会)
介護保険 高額介護(介護予防)サービス費の支給(江東区のホームページ例)
さらに平成20年(2008年4月)からは、「医療保険および介護保険の両方を利用する人」のために、「世帯が負担する1カ月の医療費と介護サービス利用の各自己負担額を合算した金額」が一定の上限金額を超えた場合には、その超えた金額を支給する「高額医療合算介護サービス費(高額介護合算療養費)」が用意されています。
「高額医療合算介護サービス費(高額介護合算療養費)」は、医療保険・介護保険それぞれから、自己負担額の比率に応じて支給されます。
医療保険から支給される分が「高額介護合算療養費」、介護保険から支給される分が「高額医療合算介護サービス費」と呼ばれます(ちなみにこれらについての申請は税務署ではなく、健康保険組合や市区町村の保険年金課などが窓口となります。確定申告と混同しないよう注意してください)。
これら「高額療養費」「高額介護サービス費」「高額医療合算介護サービス費(高額介護合算療養費)」による払い戻しを先に受けた場合は、「それぞれで還付された金額を差し引いた額」が医療費控除の対象となることに注意してください。
そうでなければ結果的に、二重に恩恵を受けるかたちになってしまうためです。
対象となる医療費の範囲・確定申告の医療費控除についての不明点は、税務署の確定申告専用窓口に電話などで問い合わせるのが早道です。
国税局・税務署を調べる(国税庁)
なお医療費控除の還付をしていなかった分については、「申告期限から5年間まで」はさかのぼって受けることができます(確定申告をした後の修正申告については1年となります)。
ただし日々の介護に追われながら、何年も前の領収書の束とあとから格闘するのは大変でしょうから、やはり毎年こまめに対処するのがベストですね。