介護が必要な身体になったとしても、何十年も家族と暮らし住み慣れた自宅でこれからも暮らしたい...というのは、本人にとっても世話をする家族にとっても、ごく自然な思いでしょう(もちろん状況的に困難な場合が多く、介護施設や医療施設で最期を迎えられる方のほうが圧倒的に多いのが現実ですが...)。
そこで介護保険は、介護に必要な「特定の住宅改修」にかかった費用(住宅改修費)の支給を行う制度を設けています。
(住宅改修費については、姉妹サイト記事 介護保険に係る、「住宅改修費」の支給について。 もご参照。)
改修工事を行う住宅は、介護保険被保険者証の記載住所と同一である必要があります。
住まいが借家である場合も申請は可能ですが、所有名義人の許可が必要となります。
この住宅改修費は、要支援・要介護を問わず(すなわち要介護度にかかわらない支給です。名称はそれぞれ「介護予防住宅改修費」「居宅介護住宅改修費」となります)、「1人あたり20万円まで」一律に支給されます。
ただしその1割(2万円)が自己負担額なので、つまりは18万円が支給の上限額です。
上限額ですので、何回かにわけて使うこともOKです。
計算を間違えないようにしたいのは、あくまで「上限が20万円」なので、たとえば30万円の工事費がかかったとして、介護保険が持ってくれる費用は20万×9割=18万円どまり、である点です。
残りの12万円は、自己負担となります。
なお、支給方法はいわゆる「償還払い」、すなわち利用者がいったん全額を立替払いして、あとで書類をそろえて申請すると9割が利用者に給付されるかたちになります。
9割が戻ってくるのはおよそ1ヶ月後ですが、一時的であっても全額の立替払いは厳しい...という場合は、住宅改修の業者に1割だけを支払い、9割ぶんの受取についてはその業者に委任する「受領委任払い」というやり方も用意されています。
支給は現在本人が住んでいる家について一回きりですが、例外として「要介護度が三段階(要支援は四段階)上がったときや、転居したときは再び利用することができます。
介護保険の住宅改修の対象となる工事は、以下の6項目に限定されており、原則として工事着工の前にあらかじめ「市区町村の同意」を得ておかなければなりません。
あくまで住宅改修(リフォーム)が対象で、トイレや浴室、室内エレベーターなどの新設工事は対象外です。
(1)手すりの取付け(転倒防止の廊下、トイレ、浴室の手すりなど)
(2)段差の改修(床段差の解消・スロープの設置など)
(3)床材の変更(すべりを防止、畳からフローリングへなど)
(4)扉の取替え(引き戸やアコーディオンカーテンなどへ)
(5)洋式便器への取替え(和式便器を洋式便器へ)
(6)上記の5つに付帯して、必要となる住宅改修
工事には時間もかかることですし、どのような工事が介護保険における住宅改修費の対象となるかについては、まずは早めに担当ケアマネジャーらに相談してみるのがよいでしょう。
市町村への申請には、住宅改修工事が必要な「理由書」を付けて、事前に所定の書類を提出する必要がありますが、この理由書もケアマネジャーが作成してくれます。
住宅改修でもっとも多く見られるのが、事前の打ち合わせをよく行わなかったり、悪質な業者に必要以上の金額を請求される「工事業者とのトラブル」です。
そのようなことを避けるためにも、時間をかけた事前の検討と準備が必要です。
なお最後になりますが、介護保険では住宅改修費のほかにも、介護生活で必要とされる一定の介護用品・福祉用具のレンタルや購入についても制度を設けています。
こちらについては 介護保険を利用した福祉用具購入・レンタルについて で解説していますので、あわせてご参照ください。